一般:U30の部で優勝したのは、豊田悠華(とよだ・ゆか)さんです。文教大学教育学部音楽専修を卒業し、元東京交響楽団首席、池田肇氏に師事しています。賞歴も華々しく、第32回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール木管楽器部門大学生の部第5位。第9回木管楽器コンクールオーボエ部門準優秀賞。第26回万里の長城杯管楽器部門国際音楽コンクール4位と数々受賞しています。第44回草津夏期国際音楽アカデミー、T.インデアミューレ・クラスを受講している豊田さんに、受賞の喜びやふだんの練習、仕事の話などを伺いました。
まずは、今回の受賞を聞いた時の気持ちを伺いました。「素直に嬉しいです。過去に受けたコンクールで賞をいただくことはありましたが、最高位はなかったため、1位をとることにこだわりはありました。この演奏は1位だとね、という圧倒的な魅力を身につけたいという気持ちがあります。ただ本番の演奏は集中しきれず、反省点は多いです。これからも頑張れというメッセージだと思って精進したいです」と真摯に語る豊田さん。
仕事をしながらのエントリーだったので、オンラインかつGW中の開催というスケジュールだったので都合がよかったです。また入賞者コンサートを行う会場であるオペラシティのリサイタルホールは、よく足を運んでいたホールなので、自分がステージに立てる可能性があることに魅力を感じましたと語ります。
豊田さんの演奏は、パワフルでエネルギーをもらえる、曲のメッセージが伝わってくる魅力的な演奏だったのでしょう。ご本人も、「細かい技術的なミスはあったけれど曲の持つメッセージを伝えられたので、納得はいきました。今まで何が足りなかったのかなと考えながら、師匠に教わりながら、曲をしっかり理解し、課題があった柔らかい音色、優しい表現、今回の曲は特に繊細な表現が必要でそういった弱点を克服するためにもチャレンジした曲でした」と言っています。
オーボエを演奏し始めたのは、中学の吹奏楽部での出合いでした。ほかの人が選ばない楽器で、楽器としては歴史があり、オーケストラなどでも大きな役割のある楽器ですが、一般の方には知名度がまだまだでマイナーなところが逆に魅力的でした。ドラマの感動的なシーンで流れる曲はオーボエが使われることも多く、人の心にスッと入り込む魅力的な音色だと思います。一目ぼれした感覚で選んだ楽器です。高校大学と一緒に歩んできました。
社会人になるまでは吹奏楽部で、そこからアンサンブルやソロにシフトチェンジしました。
「普段の練習は、年間の目標を決めて、スケジュールや練習する曲を決めてしまっています。期日ができるのでそれに向かって逆算して動けますし、やりたいことを確実にやれるので、いつの間にか年始にやりたいと思っていたことが叶っていた!という状況も多いです。練習時間の確保が難しいですが、楽器を吹いていると前向きな気持ちになり、仕事や私生活全てのモチベーションが上がる気がします。会社も応援してくれる点も大きいです。演奏を見に来てくれる、業務の調整をしてくれるなど協力してくれます。人生は一度きりだから、やりたいことをやるべきだと言ってくれるのでがんばれるなと思います。またマスタークラスなども積極的に受講しています。(自分で探しに行けば勉強できる時代だなと思います)」と嬉々として語ってくれました。
豊田さんは、SNSのコンサルティング・セールス職をしています。大きく成長している業界で、商品の魅力についてデジタルを通して伝え、バズによって社会を動かしている感覚がある仕事です。仕事後や休日は、ソロやアンサンブルで演奏会に参加しながら、さまざまな国や時代の音楽を勉強しています。
また音楽以外では絵画を鑑賞したり、師匠の体験談を聞いたり料理を食べたり、レコードを聞かせてくれる時間もとても自分の音楽に生きてきていて、大切なアイディアをくれます。楽器を練習する以外のインプットの時間も私にとっては大切です。
仕事をしながら練習時間を捻出し、休日も夜中も練習し自分と向き合うという作業が体力的に辛いことはあります。ただ好きなことをしているのであまり苦しい辛いという感覚はないです。
何事も習慣化するといいと豊田さんは言っています。演奏会などいろいろな国や時代に取り組むので、今回の曲はドイツですが、国が違うと、発音も違います。ほかの言語を学ぶような演奏技術、無のところと強調するところがはっきりしている曲調。日本人はすべてに意味を持たせたがる傾向がありますが、フランスでは印象派の絵画みたいに何が表現されているかわからない、何かありそうで何もないところもあります。曲には作曲者の意図があり、昔の人が何を思っていたのか、その時代にいったような感覚になるのも、時代旅行、国旅行でおもしろいと思います。
素晴らしい演奏をする演奏家達と同じ目線で音楽をしたい、景色を見てみたいといつも思います。またさまざまな作曲家の曲に取り組み、その国や時代のこと、作曲者の心境などを見てみたいと思います。自分が知らない世界を知るために、これからもオーボエと向き合っていきたいです。
今の仕事も大事、人生の柱として音楽も大事。もっとうまくなって、同じ実力になれば先人たちの思いが見えてくるのではないかと、苦労した先に見えるものがあると思っています。仕事と音楽、2つの両輪で人生を満喫していきたいですね。淡々と思いを語る豊田さんですが、きっと充実した演奏活動も期待できますね。
全国大会での豊田さんの演奏はこちら。