全日本管楽コンクール

一般:U55の部・吉村政子さん

一般:U55の部で優勝した吉村政子(よしむら・まさこ)さんは、ピアノ伴奏の山口短期大学准教授の木橋奏子(かなこ)先生と一緒にインタビューを受けていただきました。働きながらオーボエの練習をし、コンクールに参加している吉村さんに今回の喜びの声やふだんの練習について、将来の夢などを話していただきました。

ピアノ伴奏の奏子先生の御自宅にて

吉村さんは、幼少期のピアノから中学の吹奏楽部でクラリネットを演奏、その後中学2年でオーボエと出合います。それまで学校にはオーボエがなかったので、吉村さんはそもそも知らなかったと言います。オーボエを新しく買ってから、部活の顧問の先生が生徒に一通り吹かせて、ひとりで黙々と練習できる人だからと吉村さんにオーボエ担当を指示したそうです。中高一貫だったので中2の終わりから4年間、オーボエを演奏していました。

奏子先生は、大学の部活の先輩のお姉さん。ピアノとの演奏が今までなかったから不安でしたが、伴奏を聞くことによって自分が乗れました。「最初音合わせたとき、予想以上に柔らかいなと思った、言葉にできない感覚を感じました。音を通して引き合うような感覚……。これから楽しいことができるかもというわくわくした気持ちを感じました」と奏子先生も語ってくれました。

吉村さんにオーボエの魅力を伺うと、「コツをつかむのが難しい楽器で、練習してコツをつかんでいくと音の表現の幅が広く魅力的な楽器です。さまざまな曲の中で、表現が豊かな場面で使われる楽器ともいわれています」と笑顔で語りました。

 

会社同期とのヨーロッパ旅行(モーツァルト生家を見に)

コンクールへの出場の理由は、少しブランクもあったため地区大会の開催日時がコンクール出場を決意した時から半年以上先であったこのコンクールを選択したとのことです。

2021年10月に東京から山口に転勤、オーボエを少しお休みしました。2023年になって、音大に進んだオーボエの後輩が海外で活躍しているのをSNSで見たこと、多方面で活躍する友人たちの話を見聞きし、私も今の自分にプラスのアドバンテージがほしいと思い、まずは長年やってきたオーボエでなにか結果が残せないかと考え、ソロコンクール出場を決意しました。

社会人の時に所属していた楽団時代のメンバーと

普段の活動は、以前は楽団に所属しており定期的に活動していたが現在は特に決まった活動はしていないという吉村さんですが、演奏機会を得たいと思い、昨年は公募制の演奏に応募しました。今回のピアノ伴奏の奏子先生に誘っていただき、今年春ルーテル教会での演奏会に出場しました。他にもいくつか今年もチャレンジする予定とのことです。

受賞を聞いたとき、非常に嬉しかったのですが、演奏自体には悔いが残る場面も多くあるのでこの結果に慢心することなくこれからブラッシュアップしていきたいと思っています。

楽器の魅力と今回の曲について伺うと、「独特の音のため感情豊かに演奏できるところ、今回演奏した平尾貴四男さんの曲について平尾さんはこのように述べられていると言います。『木管の中で最も表現能力の豊かな楽器の1つであるオーボエは、牧歌的な快活さ、淡い悲哀、劇的な苦悩、意地悪い皮肉、悪魔的な嘲笑などの様々な情緒を表すことができるとケックラン(フランスの作曲家)は書いている。私はこのソナタの中で、それらを探求しようとした)』とあります。

今回のコンクールでは予選は録画審査で応募したのですがそれをきっかけに、練習の録音を毎日するようになり、録音することで客観的に自分の音を振り返りできることに気づけました。

日中営業職で運転時間も長いため運転中にプロの演奏や自分の演奏を聴き比べることで演奏の課題に気づき、帰宅してからその日中気づいた課題を練習に生かしています。

仕事で帰宅が遅い日などは音を出さずに音源を聴いて楽譜を見返すなどし、練習量ではなく毎日なにかしら発見、気づきを得ることを重視。あと家事をしたり髪を乾かしながらリードだけ吹いたりするなど、時間を有効活用しています。

悔しかった経験もたくさんありますと話す吉村さん。大学受験に失敗し、浪人してしまったこともあります。中高大社会人では何度も吹奏楽コンクールに出場、中学校の時に一度九州大会、社会人になって2回全国大会に出場したがやはり悔しかった経験もありそれがバネになっています。社会人になってからも営業で思うように成績が取れないときもありもどかしいことなどもあったが、いろんな経験、そしていろんな方との出会いがあってからの今の自分で、これまでの音楽経験、人生経験によって練習や本番で創意工夫できているなと感じる部分は多々あります。

直近の夢は海外で演奏することです。20歳の時、語学留学で1ヶ月カナダに行きその時ホームステイ先のご家族と言葉の壁を超えて生活し、演奏できた感動が今でも忘れられません。また、専門的に音楽のことを学んだことはないため、これから座学としての音楽の勉強もしてみたいと思っていますと笑顔で語ってくれました。

ピアノの奏子先生と音楽の相性も良く、とても仲の良い吉村さんは、なんにでも一生懸命な人。きっとその思いをカタチにして、将来は夢をかなえてくれるに違いありません。

全国大会での吉村さんの演奏はこちら