西川宏祐(にしかわ・こうすけ)さんは、現在陸上自衛隊の音楽隊でクラリネット奏者として活躍しています。年間100回の演奏をする中で、全国で行われるコンクールにも果敢に挑戦しています。そんな西川さんに優勝した喜びやクラリネットへの思いについて伺いました。
西川宏祐さん
龍谷大学吹奏楽部において全日本吹奏楽コンクール金賞を受賞、在学中、スイス国立チューリッヒ芸術大学で開催された夏季マスタークラスを受講、国内の音楽コンクールに多数参加、入賞するほか、関西室内楽協会主催のソリストオーディションに合格という輝かしい音楽歴を持つ西川さん。
チャペルコンサートvol.467において大阪チェンバーオーケストラ(指揮 河野正孝氏)とC.M.vウェーバー作曲「小協奏曲 変ホ長調 op.26」を共演。これまでにクラリネットを児玉知郎、蔭山晶子、似内和華子の各氏に師事。現在、陸上自衛隊に音楽隊員として所属しています。
西川さんは、さらなるレベルアップをめざし、自学研鑽のために今回のコンクールに出場したと言います。
そんな西川さんがクラリネットにであったのは、中学1年生の時。吹奏楽部の演奏を聞いて楽しそうで入ったと言います。演奏したことは全くないクラリネットを割り振られ、最初は音を出すのも難しく1~2か月かかりました。楽譜も読めない中で部活で一から教わったと言います。その時指導してくれた先生がたまたまクラリネット奏者で、中高一貫校で同じ先生に指導してもらいました。
龍谷大学吹奏楽部での演奏
大学進学を考えたとき、龍谷大学の吹奏楽が強いと聞き、入学して吹奏楽部に入部。「この時に受けたレッスンが今の演奏の根幹になっています。音楽性も表現面も大事な要素はすべて教えてもらいました」。本格的にもっとやりたいなと思ったとき、自衛隊の存在を知って演奏が仕事になることが魅力で入隊しました。
音楽隊は、公報演奏がメインの部隊、年間およそ100回の演奏を行います。「儀式・式典、広報のための演奏等を通じて、国民の皆さんと自衛隊を繋ぐ架け橋となれるよう日々努力している」と言います。
音楽隊での西川さんの演奏
「普段は、職場の練習場、自宅等で練習しています。スケール・エチュードをメインに取り組み、毎月新しい楽曲に挑戦するように心がけています。また、月2回程度レッスンにも通っています」。今の技術のスキルアップのためにもコンクールへの出場は研鑽になると年1~2回参加しています。
今回演奏した曲は、コヴァーチ作曲「コダーイへのオマージュ」。大好きなコダーイ風の旋律です。ハンガリー風の民族音楽で好きな曲。結果をwebで見て受賞したのがわかった時は純粋に評価されてうれしかったという西川さん。ご家族も喜んでくれたといいます。
しかし、自分の中には課題があったといいます。「本番は緊張するので思いもよらぬことが起こる。思いもよらぬことを想定して、演奏します。自分にとって不利な状況でもやりきるのを意識しています。何も起きなかったら、奇跡ですね。緊張すると演奏は早くなる。大きな事故はなかったけど、テンポが速くなりすぎたり、やりたい表現がやりきれなかったりといった課題がありましたが優勝したのは評価されたということでうれしいです。審査員の方は、将来性も含めて評価してくれたのだと思います。音色の選択がよかったと評価されたのはうれしかったです。自分の演奏に納得したら終わり、やり続けるから演奏家です」というプロ意識の高い西川さん。
クラリネットの魅力を聞くと、「表現の幅が広く、木の柔らかい音色が出せるところ。クラリネット自体がジャズ、クラシック、民族音楽にも使われるくらい、いろんな音が出せる楽器。作曲家もいろんな場面でクラリネットを使います。基本はクラシックですが、オーケストラの中でもソロが多い。人の声に近く、優しさも力強さも出せる楽器です」と答えてくれました。この言葉からもクラリネットのことを本当に愛していることが感じられます。
純粋に演奏家としても実力があり、自衛官として演奏する西川さんですが、「聞いてくださる人に感動を届けたいと思う、もっともっとうまくなって聞きに来てくれる人が少しでも多くなってほしいですね」と真摯に語ってくれました。
去年行ったコンチェルトの演奏風景
最後にコンクール参加をめざす後輩に伝えたいことを聞きました。「どんなコンクールでも参加し続けているとレベルアップにつながります。たとえ受賞等の結果が残らなくても、目指し続けるのに意義があります。挑戦し続けることが実力の蓄積になります」。
演奏することで生活が豊かになっているという西川さんですが、「音楽というのは瞬間的な芸術、一瞬のために何時間も練習する。魂を込めるんです。画家だったら絵画に遺せますが、演奏はその瞬間にしか味わってもらえないもの。今後もコンクール・ソリストオーディション等を通じてレベルアップに努めたいと思います。1人の表現者として、人々に感動を届ける演奏が出来るよう精進します」と頼もしい言葉で締めくくってくれました。
年間100回もの演奏を行う西川さんは、奏者としてはとてもいい環境ではあります。日々レッスンを続け、これからもコンクール等に果敢に挑戦して、スキルアップを目指してほしいですね。
※インタビューは8月に行いました。
全国大会での西川さんの演奏はこちら。