石川葉菜さん
石川葉菜(はなの)さんは、現在、福岡女学院高等学校音楽科の高校3年生。幼い頃からずっと音楽が好きで、「音楽がなくなったらどうやって生きていったらいいか分からない」という石川さんのフルートと音楽にかける熱い思いを語ってくれました。
中学時代はクラスの合唱や卒業式などのピアノ伴奏を担当
もともとピアノをやっていて、中学1年の吹奏楽部でフルートを手にした石川さん。音楽科への進学を決めるとき、家族からは「厳しい世界だから覚悟が必要だよ」という現実的な助言もありました。それでも、音楽から離れる選択肢はどうしても持てなかったと話します。「これ以上に夢中になれるものはないという確信と、もっと自分の内にある音楽や世界観を追求したい気持ちが強かったから」だといいます。
音楽科に進学すると、周囲は同世代の中でも、日々長時間の練習に励む熱心な仲間ばかり。そしてコンクールに出場すれば、評価が数字や順位という結果として突きつけられます。また、多忙な生活と、特待生としての焦りやプレッシャーもあり、ここ2年ほどの間、大事なコンクール前に体調を崩し、十分な準備ができないまま本番を迎えたり、その後も練習できない時期が続いたりという事態に陥ってしまいました。
脇坂みどり先生、的場郁子先生という現在師事する2人の先生方は、演奏面だけでなく精神面でも支えてくださいました。自分の音が嫌になってレッスンで涙がこみ上げたときもあった石川さんですが、「先生がティッシュとお茶とお菓子を用意してくれて隣にいてくださって、そうした支えもありどうにかがんばれました。本当にありがたかったです」と微笑みます。
そして、目の前のことではなく10年後、20年後という長い時間軸で自分を見つめ直すことで、徐々に冷静に考えられるようになったそうです。
大好きな脇坂みどり先生、的場郁子先生、清水美保先生と、全日本学生音楽コンクール受賞者記念コンサートにて
苦しいことがあっても、音楽やフルートが大好きという思いだけは揺るぎませんでした。音楽面で分からないことやできないことに直面すると、むしろワクワクするようになったそうです。
「もっと知りたいし、知れることがたくさんあって、教えてくださる方がたくさんいて、そういう状況が楽しめるようになりました」。
日々の練習は“量”以上に“質”に重点を置いています。毎日決まった時間だけ楽器を吹くというより、その日にやろうと決めた課題をクリアするところまで集中して取り組んでいます。集中度高く短いセッションを重ねる方が、今の自分には合っていると実感しているそう。
そんな石川さんの表現の源は、いつも鮮やかなイメージです。石川さんは絵を描くのも大好きで、風景写真などを見ながらではなく、頭の中のイメージからそのままキャンバスに起こすことがあるほどの豊かな想像力を持っています。実際に訪れたことのある場所の記憶や体験が折り重なって、自然と映像が思い浮かぶのだそうです。具体的なイメージが浮かんだら、気づくと4時間くらい絵を描くのに没頭することもあるそう。
その想像力と集中力は演奏にも生かされています。「曲のイメージがパッと思い浮かぶのが自分の長所だと思います。今回演奏したカール・ライネッケ『フルート協奏曲ニ長調 op283 3楽章』は、自分が大きな鳥になって上空を飛んでいるような感覚が浮かんできました」。
また、「大人になるにつれて、子どもの頃のような新鮮な感覚が失われないように、自分の心の動きに敏感でいられるよう日頃から心がけている」というコメントにも独特の感性が感じられます。
脇坂先生のおさらい会にて、ピアニスト藤彩貴先生と
普段の練習では、先生から指摘されたことをどう自分のものにするか、など細かい技術面のことを追求しながら取り組んでいるそうですが、「本番では楽しむことを一番大切にしている」という石川さん。それは裏を返せば、何も考えなくても体が覚えるまで練習し尽くしているからこそ、本番を楽しめるということでもあるのでしょう。
今回の本選での演奏を振り返り、「演奏そのものは課題がいろいろあり、もっとできたなと感じるところもありました。でも、今回は再スタートの場だったので、ステージを楽しむことを大切にしたいと思っていました。受賞は嬉しいですが、結果以上にステージを心から楽しめたことが本当によかったです」。
「小山裕幾フルートキャンプ成果披露演奏会」にて
進路については、関東の音楽大学への進学を目標にしています。「将来は演奏家として活動していきたい」という願いは揺らぎません。この夏は、中学の頃から憧れていた小山裕幾先生のマスタークラスとレッスンを受けることができ、そこでもさまざまな学びと多くの出会いがあったそう。数ヶ月後に控えた大学受験に向けて、また気持ちを新たに日々過ごしています。
「今の自分では想像もつかないような未知の世界まで到達してみたいです。感性を磨きながら、いつか海外でも学んでみたいですし、曲の世界を自由に表現できる奏者になりたいです」と力強く語ってくれた石川さん。苦しい時期を乗り越えたことを糧に、これからもしなやかに、素敵な奏者に成長していく姿を応援しています。
全国大会での石川葉菜さんの演奏はこちら。

